N=4,000 全国調査 / 2025年12月 / 広福観 — 松村モデル

感じる広さが、
幸せの高さを
決める。

幸福を決めるのは、年収でも地位でもない。
どこに向けて、どれだけ広く感じられるか——それが、幸福の高さを決めている。

命題 01
感じる広さが幸福を決める

広感度×幸福 r=+0.456。年収(r=+0.114)の4倍以上の強さ。

命題 02
近に軸足を置き、遠くへ広げる

幸福には順序がある。内から外へ。近い感度を中心に持ちながら、遠くへと広げていく。

フレームワーク

25通りの幸福がある

幸福は、ばらばらな感覚ではない。どこで感じるか × どの時間感覚で感じるか——この2軸で整理される。幸福は内から広げていく。この地図はその広がりを示している。

縦軸 — 空間相 / Space
どこで感じるか

幸福を感じる「場所」の軸。自分の内側から始まり、身近な人、社会、宇宙・原理へと広がっていく。どこまで届くかが、幸福の射程を決める。

↑ 遠い宇宙・原理・社会 共・理
身近な人・縁 他
↓ 近い没入・自分・感覚 自・合
横軸 — 時間相 / Time
どんな時間感覚で感じるか

幸福を感じる「時間の広がり」の軸。今この瞬間から始まり、蓄積・達成・習慣を経て、永遠・普遍へと延びていく。どこまで時間を広げられるかが、幸福の深さを決める。

← 短い今この瞬間・感覚 瞬
成長・達成・習慣 進・頂・回
→ 長い永続・永遠・普遍 久

左下が「今・ここ・自分」——幸福はここから内から外へ、瞬間から永遠へと広がる。

幸福観の分類

近感度・遠感度、
そして3つの類型

マトリクスの25の感度を整理する上で、ひとつの分け方が有効だった。自分と直接つながる体験(近感度)と、自分を超えた存在との結合(遠感度)だ。

近感度 / Near — 内側の感度
自 Self 感覚・欲求・快楽
合 Flow 没入・ゾーン
他 Others 身近な人・縁
瞬 Moment 今この瞬間
進 Growth 成長・手応え
頂 Peak 達成・完結
遠感度 / Far — 外側の感度
共 Comm. 社会・組織・役割
理 Cosmos 学問・原理・宇宙
回 Cycle 循環・習慣・誠実
久 Eternity 永続・真・善・美

この近/遠の組み合わせで、3つの幸福観が定義できる。

近福
近感度のみ
自分の身近な体験に感度が集中している状態
外福
遠感度のみ
社会・原理への感度はあるが内側の感度が薄い状態
広福
近+遠の両方
内側から外側まで感度が広がっている状態

どの類型がどれだけ幸福か——その答えは、まず命題①の証拠を見てから。

命題①の証拠

感じる広さが、
幸福の高さを決める。

広感度 × 幸福
r=+0.456
年収との相関r=+0.114の
4倍以上の強さ
近福 → 広福の差
+2.77
4.55 → 7.32
10感度フル開放
8.22
全感度開放時の
幸福スコア上限
感度の広さ別 平均幸福スコア

年収ではなく、感度の広さが幸福を分ける。

高収入(600万〜)×近感度のみ
5.11
n=166
<
低収入(〜300万)×広感度
7.28
n=382 差+2.17pt
年収が倍でも、感度が広い方が幸福だ。幸福を高めたいなら、稼ごうとするより感じる力を広げる方が効く。感度の広さが、幸福の高さを決めている。
3類型の幸福スコア(平均 / 11点満点)
近福
5.0
近感度のみ
外福
4.6
遠感度のみ
広福
6.3
近+遠の両方

広福(6.3)が最も高い。そして重要なのは、外福(遠感度のみ)が近福(近感度のみ)より低いことだ。外に開いていても、内が開いていなければ幸福にはならない。

年収の上に感度の地図を重ねると、逆転が見える。

近感度
0〜2
中感度
3〜5
広感度
6〜10
← 感度の広さ →
低収入〜300万
4.49
n=691
6.00
n=514
注目
7.28
n=382
中収入300〜600万
4.82
n=376
5.68
n=314
7.20
n=237
高収入600万〜
注目
5.11
n=166
6.49
n=166
7.53
n=148
↑ 年収 ↑
高収入×近感度(5.11)が、低収入×広感度(7.28)に負ける。稼ぐ力より、感じる力だ。
命題②の証拠

近に軸足を置き、
遠くへ広げる。

感度の広さに加え、もう一つの変数がある。どこを幸福の重心(主軸)に置くか——どこを起点に感じるかだ。

近くに起点を持つ。そこから遠くへ広げる。

データが示す最良のパターンは「近を主軸にしながら、遠くまで感度を広げた人」だ。まず自分を中心に持つ。そこから他者へ、社会へ、永遠へと広げていく。

孔子はこれを「修身・斉家・治国・平天下」と呼んだ——自分を修め、家をととのえ、国を治め、天下を平らかにする(儒教の古典『大学』より、礼記の一篇)。近くから始まり、遠くへ広がる。この順序は、人類がずっと辿ってきたものだ。

ここで、自己中心的という言葉について再評価してみたい。これは日本において長らく好ましくない精神性として批判されてきた。たしかに自分のことだけ考えて他者や社会に迷惑をかける精神性には有害性があるだろう。ただそれは、言葉として外部不感性——あるいは自己限定性と呼ばれるべきものだ。中心が自分にあること自体が有害であるわけではなく、むしろこの調査からは幸福の重要因子として見ている。近い感度を軸足に持ちながら、遠くへも開いていれば——自己中心であっても、広い主観だ。広い主観は、良いものだ。
感度の広さ別:主軸が近 vs 主軸が遠(全体平均5.60)
感度の広さ主軸が近主軸が遠差近の年収遠の年収
なし(0)4.464.00+0.46260万249万
少(2感度)5.374.79+0.57290万238万
中(4感度)6.355.62+0.72345万246万
広(6感度)7.386.70+0.68353万291万
感度が少なくても(主軸が近にある場合)、遠軸の人より+0.46pt高い——年収差+11万円のほぼ同条件で。どこに感度を置くかが、幸福の高さを変える。

最も幸福なのは「近を主軸に置きながら、遠くまで広感度を持つ人」——6.70。低収入×近軸×広感度(6.65)が高収入×遠軸×広感度(6.17)を上回る。
近主軸×広感度(近起点型)
6.70
主軸(起点) 近感度 遠感度
遠主軸×広感度(遠起点型)
5.76
核心的発見

進(Growth)は、
最大効果のレバーだ。

10の感度の中で、幸福と感度の広さ、両方を同時に引き上げる感度が一つある。進(Growth)——成長・前進・手応えだ。

進を主軸にした人の幸福
6.37
全10感度中最高
久(4.05)の+2.32pt上
進を主軸にした人の広感度
4.86
感度数で全感度中最多
久(1.89)の2.6倍
進感度ON時の幸福差
+1.72
ON=6.73 / OFF=5.01
単一感度効果で第2位
時間相主軸別 幸福スコアと感度の広さ
10感度ポジションマップ — カバー効果 vs 主導効果

横軸:感度をカバーしているときの幸福上昇効果。縦軸:その感度を主軸にしたときの幸福スコア。点線は全体平均(5.60)。

進を持つ人は広く感じ、広く感じる人は幸福だ。

進が動くと、他の感度も開く。進がONの人の感度の広さは平均5.96——他のどの感度よりも、進は複数の感度を同時に引き上げる。

同じ「理(Cosmos)」を主軸にしても、「理×進(学び続ける)」だけが5.82と例外的に高い。学ぶことが進を動かし、進が他の感度を開く。日々、少しでも前に進んでいる感覚——それが広感度を保ち、幸福の水準を上げ続ける。
あなたの幸福の地図

あなたの幸福感度は、
どこまで広がって、
どこで止まっているか。

広感度になれているか。近に軸足を持てているか。進(Growth)の感度は開いているか。地図を持つことは、今の自分の位置を知ることだ。

診断 — 3分

6つの問いに答えると、あなたの幸福の地図とタイプが現れる。

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感じる力は、
設計できる。

どこに感度を向け、どこまで広げるか——それは選択できる。内から始め、外へ広げる。近くから軸足を持ち、遠くへ続ける。

地図を持つ人は、自分がどこにいるかを知っている。どこへ向かえるかも知っている。知ることで、動き方が変わる。
付属資料

詳細データ・試行分析

本編から外した詳細データと試行分析。十分に検証できたものから本編に組み込む。

A. 年代別 幸福スコア・感度の広さ(U字型)

幸福の底は30〜50代の台地。広感度の底は50代。60代以降に両方が回復する。

C. 年代別 感度開放率(全10感度)

30〜50代で合(没入)・理(学問)が急落し、回(習慣)が増加する。60代以降に瞬・他が回復。
注:1時点の横断調査。年代差か世代差かは慎重な解釈が必要。

D. 外福のバリエーション(詳細)

外福(遠感度のみ)の具体的パターンと幸福スコア。

【対照】近起点型広福
6.70
基準
自己犠牲型(他者・社会ON、自己の感覚OFF)
5.15
-1.55
求道型(理のみON、自己・他者OFF)
5.29
-1.41
求道主軸型(理を中心、自他なし)
4.87
-1.83
禁欲型(理・久ON、自己・他者OFF)
4.86
-1.84
外福全体(遠感度のみ)
4.56
-2.14

自己犠牲型がやや高い(5.15)のは、「他者との関係」という近感度が残っているから。求道・禁欲の生き方が幸福を目指していない場合もある——データは感度の構造との相関を示すものだ。

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注釈・定義

幸福スコア:Q10(0〜10の主観的幸福感)を1〜11スケールに変換(11-Q10)。感度の広さ:Q11/Q12各5項目で「あてはまる/ややあてはまる」(スコア≤2)の合計(0〜10)。主軸:Q13(空間相最重視)×Q14(時間相最重視)の単数回答。近感度:自・合・他(Q11)、瞬・進・頂(Q12)。遠感度:共・理(Q11)、回・久(Q12)。近軸:Q13∈{自,合,他}かつQ14∈{瞬,進,頂}。

Source: 幸福に関する自主調査(2025年12月 / N=4,000 / インターネット調査 / 楽天インサイト)広福観——松村モデルによる幸福の時空マトリクス

測定論的注記

感度指標(Q11・Q12)と幸福度(Q10)はいずれも同一回答者・同一時点の自己報告であり、共通メソッドバイアス(CMB)の混入可能性がある。この点について事後的検討を行った。

Harman単一因子検定では第1因子の説明分散は43.4%(閾値50%未満)であり、深刻なCMBは示唆されなかった。全センサー項目の平均を応答スタイル変数として統制した偏回帰分析でも、近センサー(快・共・自・継)の正の関連は維持され、外福効果(広福型比Δμ=−2.02、d=0.91)も有意に残存した(F=357.8、p<.001)。収入を追加統制しても構造に変化はなかった。

近センサーの優位性についても、RS統制後の回帰係数上位5位をすべて近センサーが占め(快β=0.621が最大)、近・遠間のβ平均差は有意であった(p=0.038)。広福型が近福型を上回ることも確認されたが(Δμ=+0.67、d=0.31)、効果量は小さく、広さの寄与は近を土台とした上乗せにとどまる(ΔR²=0.27%)。

本調査は広福観フレームワークの初期的な実証を目的とした簡易調査であり、逆転項目の不在・横断設計という設計上の制約は残る。縦断調査・行動指標の導入・独立サンプルによる再現など、測定の精緻化を今後の重要課題と位置づけている。広福観の構造的検証に関心をもつ研究者・実務家による独立した検証や批判的検討も期待したい。

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